コーヒーは世界中で愛される飲み物です。その香りと味わいだけでなく、健康への影響も大きな注目を集めています。特に「1日3杯のコーヒー」が体に良いという話を耳にしたことはありませんか?
あなたも毎日のようにコーヒーを飲んでいるのではないでしょうか。朝の一杯から始まり、午後のひと休みにもう一杯、そして夕方にもう一杯…気がつけば1日に3杯以上飲んでいることも珍しくないかもしれません。
結論から言えば、適度なコーヒー習慣は多くの健康効果をもたらす可能性があります。一方で、過剰摂取にはリスクも伴います。では、どのくらいの量なら安全で効果的なのでしょうか?
本記事では、コーヒーを1日3杯飲む習慣がもたらす健康効果やリスクについて、さらに美容やダイエットへの関係も含めて、信頼できる最新の科学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
コーヒーがもたらす主な健康効果
近年の大規模研究により、適度なコーヒー習慣が心血管疾患や脳卒中のリスク低下と関連することが明らかになっています。
心血管疾患や脳卒中のリスク低下
例えば、欧州心臓病学会で報告されたイギリスの研究では、1日0.5~3杯のコーヒーを習慣的に飲む人は、全く飲まない人に比べて脳卒中の発症リスクが21%、心臓病など心血管疾患による死亡リスクが17%低かったとされています。また全死亡(あらゆる原因による死亡)リスクも12%低下しており、コーヒー適量摂取者の方が長生き傾向が見られました。
国立がん研究センターのコホート研究(JPHC研究)でも「1日4杯まで」のコーヒー摂取は死亡リスクの有意な低下と関連することが示唆されています。
こうした効果の背景には、コーヒーに含まれる豊富な有効成分の働きがあると考えられます。コーヒー豆にはポリフェノール(クロロゲン酸)やカフェインなどが含まれており、強い抗酸化作用によって体の酸化(いわゆる「サビ」)を防ぎ、老化や病気のリスクを下げるのです。
実際に、適度な量(1日4杯以下)のコーヒーを習慣的に飲んでいる人は、心疾患やアルツハイマー病・パーキンソン病といった神経変性疾患、そして2型糖尿病などから体を守ってくれるという研究報告が多数あります。
アメリカやヨーロッパで行われた複数の調査でも、コーヒーをよく飲む人ほど2型糖尿病の発症リスクが低い傾向が一貫して認められています。例えば権威ある医学誌に発表された研究では、1日7杯飲む人は2杯以下の人に比べて糖尿病になるリスクが約50%減少したと報告されています。
肝臓の健康にも良い影響を持つ
さらにコーヒー習慣は肝臓の健康にも良い影響を持つ可能性が指摘されており、肝機能の指標改善や肝がんリスク低下といったデータも報告されています。
平たく言うと、適量のコーヒーは全身の様々な臓器に良い影響をもたらす可能性があるということです。その理由としては抗酸化作用や抗炎症作用、血糖値や血圧の調整作用などが挙げられ、総合的に生活習慣病や老化現象を抑制していると考えられます。
特に日本人を対象とした調査でも「コーヒーを毎日3~4杯程度飲む人は、全死亡リスクや心疾患・脳卒中による死亡リスクが有意に低い」との結果が示されており、日常的なコーヒー習慣が健康長寿に寄与する可能性が高まっています。
コーヒー摂取に伴うリスクと注意点
健康に良い効果が期待できるコーヒーですが、一方で過剰な摂取はデメリットもあることをご存じでしょうか。
カフェインの取りすぎは要注意
まず、コーヒーに含まれるカフェインを一度に大量に摂りすぎると、中枢神経が刺激されてめまい、動悸(心拍数の増加)、不安感、震え、不眠などの症状が現れることがあります。慢性的な過剰摂取は睡眠の質を損ない、日中の疲労やストレス増大を招く恐れもあります。
特に体質的にカフェイン感受性が高い人では、コーヒーを飲むと強い動悸や血圧上昇を感じる場合もあります。こうしたカフェイン過敏症の人は、ごく少数ですが存在するため、自分の体調に合わせて量を調整することが大切でしょう。
カフェイン依存にも注意が必要
また、カフェイン依存にも注意が必要です。毎日大量のコーヒーを飲んでいると、カフェインに対する耐性がつきやすくなります。急にコーヒーを断つと頭痛や倦怠感といった離脱症状(カフェイン・ウィズドロール)が起こる場合もあります。コーヒーの量を減らす際は、少しずつ減らすなど工夫すると良いでしょう。
カフェストールやカホウェオールにも注意が必要
さらに意外な点として、コーヒーの淹れ方によっては健康リスクが高まることがあります。コーヒー豆に含まれるカフェストールやカホウェオールといった油分は、コレステロール値を上昇させる働きがあることが知られています。
通常、ペーパーフィルターを使ってドリップする場合はこれらの成分が紙に吸着されます。しかしフレンチプレスや金属フィルターで淹れたコーヒーや、鍋で煮出すような濾過しないコーヒーでは油分がそのまま残るため、飲みすぎるとLDL(悪玉)コレステロールを上昇させる可能性があります。
実際、スウェーデンの研究では金属フィルター式のコーヒーメーカーを利用する職場の人たちで血中コレステロールが有意に高くなる傾向が報告されています。コレステロールが気になる方は、紙フィルターで淹れるドリップコーヒーを選ぶのがおすすめです。
最後に、妊娠中や授乳中の方にとってカフェインはより注意が必要です。カフェインの一部は胎盤を通過して胎児へ影響する可能性が指摘されており、妊婦さんの場合はコーヒーの飲みすぎは避けるべきでしょう。
世界保健機関(WHO)は「妊婦はコーヒーを1日3~4杯までにするように」と注意喚起しており、イギリスやカナダの保健当局も妊娠中のカフェイン摂取量の上限を1日200~300mg(コーヒー約2杯分)と定めています。妊娠中・授乳中はできるだけ1日2杯程度までに抑えるか、必要に応じてカフェインレスコーヒー(デカフェ)を活用すると安心です。
1日に飲んでよいコーヒーの適量は?

では、コーヒーは1日何杯まで飲んで良いのでしょうか?
コーヒーは1日3~4杯程度がひとつの目
結論から言えば、健康な成人であれば1日3~4杯程度がひとつの目安になります。厚生労働省も引用しているカナダ保健省の指針によれば、健康な大人では1日あたり400mgまでのカフェイン(コーヒー約3杯分)であれば危険な悪影響はないとされています。これはちょうどマグカップ3~4杯のコーヒー量に相当します。
また、先に述べたように多くの疫学研究で健康効果が認められるのも1日3~4杯前後が中心です。例えば米国の大規模調査では「1日4~5杯」飲む人の死亡リスクが最も低かったとの報告があります。国立がん研究センターの研究でも「5杯以下であれば主要死因による死亡リスクが低下する可能性がある」と示唆されています。
これらを踏まえると、1日あたり3杯程度(場合によっては4杯まで)のコーヒーを楽しむ分には、健康面でメリットが期待できると言えるでしょう。
5~6杯以上の過剰な摂取については注意が必要
一方で、5~6杯以上の過剰な摂取については注意が必要です。一般的に400mg(コーヒー約4杯)以上のカフェインを常態的に摂ることは推奨されません。カフェインは摂取後およそ4~6時間で半減しますが、個人差が大きく、代謝が遅い人では体内に長く残留します。
そのため、夕方以降に何杯も飲むと夜間の睡眠に影響しかねません。自分にとっての適量は体質・体調によって異なるため、「飲みすぎかな?」と感じたら量を減らしたりデカフェに切り替えたりして調節しましょう。特に心拍や睡眠に支障を感じる場合は一度1日2杯程度に落として様子を見るのがおすすめです。
なお、高齢者や持病のある方もカフェイン感受性が高い場合があります。ご自身の年齢や健康状態も考慮しつつ、無理のない範囲でコーヒー習慣を楽しんでください。
1日3杯のコーヒーがもたらす美容への効果
コーヒーは健康だけでなく美容面においても嬉しい効果を発揮することをご存じでしょうか。
最大のポイントは、コーヒーに含まれるクロロゲン酸をはじめとするポリフェノール類の抗酸化パワーです。抗酸化作用により体内の活性酸素を抑えることで、細胞の老化を防ぎお肌の若々しさを保つのに役立ちます。
コーヒーを日常的に飲む女性はシミができにくい
実際、コーヒーを日常的に飲む女性はシミができにくいというデータがあります。ある調査では、1日2杯以上コーヒーを飲む人はほとんど飲まない人に比べて紫外線による顔のシミが明らかに少なかったと報告されています。これはコーヒー中のクロロゲン酸によって、シミの原因となるメラニン色素の生成が抑えられたためと考えられています。
このようにコーヒー習慣は美肌(シミ・シワ予防)に貢献する可能性があるのです。
コーヒーの抗炎症作用も美容にプラス
さらに、コーヒーの抗炎症作用も美容にプラスです。肌の炎症反応を鎮め、ニキビや肌荒れの悪化を防ぐ効果が期待できます。クロロゲン酸とカフェインはいずれも抗炎症作用を持つため、コーヒーを適度に飲む習慣が体全体の炎症レベルを下げ、結果的にお肌の老化(炎症によるコラーゲンの劣化など)を遅らせるのに役立つと考えられます。
コーヒーには利尿作用がある
コーヒーにはまた利尿作用があることが知られています。適度な利尿作用は身体の余分な水分を排出し、むくみの改善に役立ちます。むくみが解消されると顔の余分な膨らみが取れ、フェイスラインがすっきりしたり目の下のたるみ・クマが軽減したりします。その結果、ほうれい線などのシワの予防にもつながるため、コーヒーによるデトックス効果は美容面でもメリットと言えるでしょう。
1日3杯コーヒーを飲む際に、美容の観点から注意したいポイント
一方で、美容の観点から注意したいポイントもあります。まず、コーヒーに砂糖やクリームを大量に加える飲み方は、カロリー過多や糖分の摂りすぎによって肌荒れやニキビを引き起こす可能性があります。
糖分の過剰摂取は皮脂の分泌を促してしまい、毛穴詰まりや吹き出物の原因になりえます。せっかくのコーヒーの抗酸化作用も、糖分の過剰摂取による肌へのダメージで相殺されかねません。美容目的でコーヒーを飲むならブラックか甘味を控えめにするのが基本です。
もう一点、カフェインの影響による肌トラブルにも気を配りましょう。先述のようにコーヒーのカフェインは利尿作用がありますが、過度な利尿は体内のビタミンやミネラルを排出してしまうことがあります。その結果、栄養不足で肌代謝が乱れ、ニキビができやすくなる可能性も指摘されています。
実際に「カフェインがニキビを悪化させる」と感じる人もおり、皮膚科の先生によればカフェイン由来のニキビが心配な人はデカフェに切り替えるのも一つの方法です。このように、自分の肌の状態に合わせてカフェイン量を調整することも大切でしょう。
1日3杯のコーヒーはダイエットの強い味方になる?
「コーヒーダイエット」という言葉を耳にすることがあるように、コーヒーには減量をサポートする効果も期待されています。
コーヒーが持つ脂肪燃焼促進作用
まず注目すべきは、コーヒーが持つ脂肪燃焼促進作用です。コーヒーを飲むと交感神経が刺激され、体の代謝スイッチがONになります。京都大学の研究によれば、コーヒー摂取によって自律神経のうち交感神経の働きが高まり、脂肪の分解・燃焼が促進されることが確認されています。
つまり一杯のコーヒーが運動時の脂肪燃焼効率を高めてくれる可能性があるのです。また、クロロゲン酸にも脂肪や糖質の代謝をサポートする働きがあり、摂取することで脂肪の蓄積を防ぐ効果が期待できます。
リラックス効果
さらに、コーヒーは食欲やストレスコントロールにも一役買います。ストレスが溜まるとつい甘い物を過食してしまう…という経験はありませんか?
コーヒーの香りにはリラックス効果があり、脳波の実験ではコーヒーの香りを嗅ぐとリラックス時に出るα波が増えることが示されています。このリラックス作用によりストレスによる暴飲暴食を抑え、ダイエット中のメンタル面を支えてくれます。
覚醒作用
またカフェインには覚醒作用もあるため、集中力ややる気を高めてくれる効果があります。ダイエット中の運動前にコーヒーを飲めば、気分をシャキッと切り替えてトレーニングに集中できるでしょう。
コーヒーのもう一つのメリットは低カロリーであることです。ブラックコーヒーであれば1杯(150ml)あたりたった4kcal程度しかありません。これは実質「ほぼゼロカロリー」と言ってよく、他の甘い飲料に比べて圧倒的に太りにくい飲み物です。
ダイエット中の水分補給として、砂糖たっぷりの清涼飲料水やジュースの代わりにカロリーのないコーヒーを選べば、それだけで摂取カロリーを抑制できます。特に砂糖・ミルクを入れないブラックコーヒーなら安心して飲めるため、ダイエットのお供には最適です。
1日3~4杯程度のコーヒー習慣は肥満リスクの低さと関連している
では、「コーヒーを飲めば飲むほど痩せるのか?」というと必ずしもそうではありません。確かに多くの研究で1日3~4杯程度のコーヒー習慣は肥満リスクの低さと関連しています。しかし、だからといって極端に大量のコーヒーを飲んでも劇的に痩せる魔法にはなりません。
カフェインの過剰摂取は前述のようにデメリットもあるため、ダイエット目的でも適量を守ることが肝心です。また、コーヒーさえ飲めば何を食べても良いという訳では当然ありません。バランスの取れた食事と適度な運動を基本にしつつ、コーヒーの力を上手に借りることでダイエットを効率よく進めることができるでしょう。
コーヒーでダイエット効果を得るためには運動前に飲むこと
コーヒーでダイエット効果を得るための具体的なポイントとしては、運動前にコーヒーを飲むことが挙げられます。運動の30分ほど前に一杯のブラックコーヒーを飲めば、カフェインが血中に行き渡りちょうど運動中に脂肪燃焼を後押ししてくれます。
実際、カフェインとクロロゲン酸には皮下脂肪や内臓脂肪の燃焼を促進する作用が確認されており、運動との組み合わせでより効果を発揮します。また前述の通り、ストレスによるドカ食い防止にもコーヒーのリラックス効果が役立つため、間食が欲しくなったらまずコーヒーでひと呼吸置いてみるのも良い習慣です。
毎日3杯コーヒーを飲む際に、健康的に楽しむためのポイント
ここまで見てきたように、コーヒーは適切に取り入れれば健康・美容・ダイエットの強い味方となる飲み物です。その恩恵を最大限得るために、コーヒーの飲み方にもひと工夫加えてみませんか。
1. ブラックで飲むor甘さ控えめで
コーヒー本来の効果を享受するには、できるだけブラックで飲むのが理想です。砂糖やシロップをたっぷり入れてしまうと糖分の過剰摂取につながり、健康効果よりもデメリットの方が大きくなってしまいます。
どうしても甘みが欲しい場合は少量のハチミツやシナモンで風味を付ける、または低カロリー甘味料を使うなど工夫しましょう。ミルクを入れる場合もスキムミルク(脱脂乳)にすると脂肪分を抑えられます。基本は「コーヒーはブラックが一番」と覚えておきましょう。
2. ペーパードリップで淹れる
コーヒー豆の成分を考えると、健康志向の方にはペーパードリップで淹れる方法がおすすめです。紙フィルターが余分な油分(カフェストールなど)を除去してくれるため、コレステロール上昇のリスクを抑えられます。
フレンチプレスやエスプレッソマシンも美味しいコーヒーが淹れられますが、毎日大量に飲む場合は紙フィルター方式をメインにすると安心です。最近では金属フィルターでも目が細かく油分をある程度カットできる製品もありますが、それでも紙には及びません。健康効果を優先するなら淹れ方にもこだわってみてください。
3. 飲むタイミングに気を付ける
コーヒーのカフェイン効果を活かすには摂取するタイミングも重要です。朝~午後の早い時間にかけてはコーヒーが眠気覚ましや代謝アップに有効ですが、午後遅くから夜間にかけてのカフェイン摂取は睡眠の妨げになります。
不眠は健康と美容の大敵ですので、夕方以降はデカフェに切り替えるといったメリハリをつけましょう。例えば夕食後はカフェインレスコーヒーやカフェイン含有量の少ないハーブティーにするなどして、夜はリラックスモードにシフトするのがおすすめです。ただしデカフェでもポリフェノールや香りのリラックス効果は健在なので、物足りなさは感じにくいでしょう。
4. 自分の体と相談しながら
最後に、コーヒーとの付き合い方は人それぞれです。適量は個人差がありますし、体調によって感じ方も変わります。
胃腸が弱い人は空腹時の濃いコーヒーで胃が痛くなることもありますので、食後に飲む、ミルクを少し入れるなどして刺激を和らげると良いでしょう。貧血気味の人はコーヒー中のタンニンが鉄分吸収を阻害することもあるため、食後すぐではなく時間を空けて飲むと安心です。
いずれにせよ、コーヒーを飲んだ後に不調を感じる場合は無理をせず量を減らすことが肝心です。「良薬も量を誤れば毒」と言いますが、健康効果があるからと過信せず、あくまで”ほどほど”を守って長く付き合っていきましょう。
まとめ
コーヒーを1日3杯程度楽しむ習慣は、現代の研究が裏付ける有益な健康効果をもたらす可能性があります。心疾患や脳卒中リスクの低下、糖尿病予防、さらには美容やダイエットの面でも、コーヒーに含まれる豊富な成分が私たちの体に良い作用を及ぼしてくれるでしょう。
適度なコーヒー摂取は「百薬の長」とも言える存在ですが、一方で飲みすぎや砂糖の入れすぎには注意が必要です。適量(1日3~4杯)の範囲内であればリスクは少なく、安全にそのメリットを享受できると考えられます。
ぜひ本記事で紹介したポイントを参考に、おいしいコーヒータイムを取り入れながら健康づくり・美容ケア・ダイエットに役立ててみてください。毎日のコーヒー習慣を上手に味方につけて、豊かな生活と健やかな身体を手に入れましょう。
参考情報について
本記事で言及した研究や調査に関する詳細は、以下の機関や論文を参考にしています:
- 欧州心臓病学会発表研究(イギリス)
- 国立がん研究センター コホート研究(JPHC研究)
- 京都大学の自律神経に関する研究
- 世界保健機関(WHO)妊婦への指針
- カナダ保健省のカフェイン摂取指針
- 厚生労働省関連資料
- スウェーデンにおけるコレステロール研究
- 各国保健当局(イギリス、カナダ)の妊娠中カフェイン制限